自宅で出来る本格的な紙の作り方を紹介します。
今回は、「藁(わら)」を主に使って何種類か紙を作ったので、
紙づくりに必要な材料や道具、工程など、参考にして頂ければ嬉しいです。
藁(わら)とは
藁は、古くから日本で使用されてきた和紙の原料の一つです。
- 藁は、稲や小麦などの穀物の茎部分であり、昔から紙の材料として使われていました。
- 繊維は、脆く破けやすい所が難点ですが、より自然の状態に近い紙になります。
- 現代では、デザインや実用性を考慮し、他の材料と組み合わせて利用されています。
用意するモノ
原料
- 藁すさ(ワラスサ)
- 再生パルプ
(リサイクルされた紙の原料)
紙漉き道具
- 紙漉きセット
[簾(すだれ)、漉き枠、漉き桁(げた)〕 - ステンレス紗(しゃ)
- 角材 2本
(タテヨコ30mm×長さ600mmくらい)
※台所で紙漉きセットを置くために使用 - ネリ(粘剤)
乾燥用具
- 乾燥板(ステンレス、アルミ、コンパネなど)
- アイロン
- 布切れ 2枚
※目が細かいもの、ボロ服でもOK、タオルはNG
薬品
- 漂白剤(カルキ)
- ソーダ灰
その他の道具
- 鍋(ステンレス)
※アルミはNG - ザル (ステンレス)
- ミキサー
- 計量器
- 計量カップ 2つ(500㎖以上)
- 混ぜ棒(マドラー、スプーンなど)
- 小皿 3枚
※作った原料を入れるために使用 - ピンセット
- マスク、ゴム手袋
藁すさ(ワラスサ)
日曜左官エムケー工芸
細目 30g
再生パルプ
画材・ものづくりのアートロコ
乾燥重量 100g
紙すきセット
画材・ものづくりのアートロコ
漉き桁、すだれ、漉き枠セット (木製)
枠内寸法:180mm × 255mm
ネリ(粘剤)
アワガミファクトリー
粉末 50g
ステンレス紗(しゃ)
Mollytek
ステンレス平織金網
80メッシュ 幅30cm×100cm
炭酸ナトリウム (ソーダ灰)
NICHIGA(ニチガ)
粉末 1kg
高度カルキ(漂白剤)
MATSUBA(マツバ)
フレーク状 500g【食品添加物】
乾燥板(ステンレス)
エスコ(ESCO)
300 x 300 x 3.0mm
事前準備
ネリ(粘剤)の準備
- ミキサーに水500mlを入れ、ネリ剤を約0.2g入れる。
- 1分程度ミキサーをかけ、別の容器に移す。
- 1日ほど放置し、粘剤が全て溶けて透明な液になれば完成。
- 水中に「とろみ」が生まれ、原料の繊維が細かく解れます。
- その状態で原料を流せるので、均一で強い紙を作れます。
紗(しゃ)の準備
- 紗(ステンレス製を使用)を、漉き枠と同じくらいのサイズにカットする。
※カッターで何回か切り込みを入れれば、切れます。 - 簾(すだれ)に紗を被せる。
- 目が細かい平らな紗を被せる事で、紙にすだれの跡が付かず、綺麗で平らな紙が作れます。
※竹のすだれをそのまま使うと、紙にすだれの跡が残ってしまいます。。
(そういった紙が良ければ、紗は必要ありません)
手順① ソーダ灰で、藁の繊維を煮る
- なぜソーダ灰で繊維を煮るのか?
アルカリ性のソーダ灰で繊維を煮る事で、紙に不必要な不純物を分解します。
①-1. 鍋に藁、ソーダ灰、水を入れる
- 藁 30g
- ソーダ灰 6g
- 水 1ℓ
ソーダ灰で繊維を煮る際は、
必ずマスクや手袋をし、換気扇を回して作業をして下さい。
①-2. 加熱し、繊維を煮込む
- 適度に混ぜながら、弱火で1〜2時間くらい煮込みます。
※水量が減ってきたら、水を足して下さい。 - 時間が経ったら、熱を止めて冷めるまで放置します。
- 熱が冷めたら、繊維を濾してください。
※高温の状態でソーダ灰を入れないでください。化学反応が起こり爆発します。
①-3.繊維に残ったアルカリ液を落とす
- 水洗いをし、繊維に残ったアルカリ液を落とします。
- 2〜3回水洗いをし、しっかり落として下さい。
手順② : 漂白剤で、さらに不純物を取り除く
漂白前を未晒(みざらし)、漂白後を晒(さらし)といいます。
どちらでも紙の原料として使用できますが、今回は、半分の原料を晒にします。
②-1. 鍋に原料、漂白剤、水を入れる
- 藁 15g
- カルキ(漂白剤) 6g
- 水 1ℓ
漂白をする際は、マスクや手袋をし、換気扇を回して作業をして下さい。
②-2. 加熱し、繊維を煮込む
- 60度くらいを目安にゆっくり加熱します。
- 10〜30分くらい繊維を煮たら、濾して下さい。
②-3.繊維に残ったカルキ液を落とす
- 水洗いをし、繊維に残ったカルキ液を落とします。
- 2〜3回水洗いをし、しっかり落として下さい。
②-4.漂白しきれなかった繊維を取り除く
- 黒く残った繊維を、ピンセットなどで取り除きます。
手順③ : 藁と再生パルプを配合し、原料を仕込む
③-1. 原料をミキサーで撹拌する
藁(わら)の場合
- 撹拌する時間によって、繊維の長さが変わるので、作りたい紙に合わせて調整して下さい。
木材パルプ(再生パルプ)の場合
- 使用する量のパルプを1〜2分程度ミキサーで撹拌します。
※撹拌が足りないと、固まったパルプが紙に混ざってしまいます。
③-2. 撹拌した原料を濾す
- 原料が落ちないように、目が細かい網を使用して下さい。
※目開きが300μ(0.3mm)くらいであれば、どんな原料でも大丈夫です。ちなみに使用しているのは、ポリエステルメッシュです。
③-3. 原料を配合する
- 2つの原料を、使う分だけ容器に入れます。
(藁とパルプの配合は、自由に調整して下さい) - 水600mlを入れ、よく混ぜます。
③-4. ネリを入れる
- ネリを少量加え、よく混ぜます。
- トロミが出たら、OKです。
※ネリが混ざりきれていないと、紙漉きの際に練りの部分にだけ原料が乗っからず、紙に穴が空いてしまいます。
手順④ :紙を漉く
④-1. 紙漉き道具を準備する
- 角材を置き、紙漉き道具をセットします。
(下から、すげた、すだれ、紗、漉き枠の順) - 紗とすだれに水をかけて全体を濡らし、空気を抜きます。
※空気が残っている場所があると、そこだけ原料が乗っからず、紙に穴が空いてしまいます。
④-2. 原料を流す
【一層で紙を作る場合】
- 普通に原料を流します。
【複数の層で紙を作る場合】
- 二層目からは、手をかざし、一度クッションさせて※原料を流して下さい。
※高い位置から直接一層目の原料に流してしまうと、一層目の原料の形を崩してしまいます。
④-3. 水分を落とす
- 原料を流し終わったら、木枠を外します。
- 漉き桁を立てかけて、余分な水分を落とします。
手順⑤ : 紙を乾かす
- ①「漉いた状態で、そのまま自然乾燥させる」方法
特徴:
・紙に一切の圧力がかかっていないので、ふっくらとした柔らかい紙に仕上がる。- ②「乾燥板を使って乾かす」方法
特徴:
・乾燥板に貼る際、紙に圧力がかかるので、硬い紙に仕上がる。
・乾燥板の仕上げ面の特徴が反映された紙になる。(例:布であれば、布目の跡が紙に映る)
今回は、ステンレスの乾燥板を使用して紙を乾かします。
⑤-1. 漉いた紙を布切れに置く
- 平らな板の上に、シワがない布切れを敷きます。
- 紗を手に持ち、紙面が布切れに向くように裏返し、ゆっくり置きます。
④-2. アイロンで、紙の水分を落とす
- 紗の上に、さらに布切れを被せます。
- 布切れの上からアイロンをかけ※1、紙に含んだ水分を、ある程度※2落とします。
※1:アイロンで押しすぎると、紗に跡が残ったり、紙が破けてしまうので注意して下さい。
※2:目安は、紙から紗が剥がせるくらいまで。
④-3. 紙を乾燥板に貼る
- 乾燥板を用意します。
- 布切れで水分をある程度落とした紙を、乾燥板に貼ります。
- 紗をゆっくり剥がします。
- 紙の上から布切れを被せ、低温のアイロンで全体的に圧をかけながら、紙を板に貼っていきます。
- 貼り終わったら布切れを取り、暖かい場所で乾燥させて下さい。
④-4. 完成
- 乾いたら完成です。
- 紙を剥がすときは、破けないように慎重に剥がしてください。