作品名:刻(とき)
原料:楮、針葉樹パルプ、落葉樹パルプ
描画材:墨
サイズ:S40号(1000mm✖️1000mm)
この作品は、自分で紙を作る所から制作が始まっています。
私は紙を自分で作り、その紙に絵を描く方法で制作活動をしています。
ある意味とてもシンプルですが、紙漉きで出来る表現の面白さや奥深さは、かけた時間の分だけ感じているので、「紙漉き+絵画」という方法で出来る表現を追求しています。
自分で漉いた紙をどう使う?
「紙を作ったけど、どう使っていいか分からない」「和紙ってどんな場面に使えるのか?」
紙づくりを体験した方でもそんなふうに思う事があるのではないのでしょうか?
実際、紙漉きという行為に興味を持ち、紙漉きを体験するまでが目的で、
自分で漉いた紙をどう使うかという事にはあまり興味が持ちづらいので、紙漉きを継続的に続ける人はあまり多くはないのかと思います。
今回は、漉いた紙の活用方法の一例として、
「自分で漉いた紙に絵を描く」和紙の使い方を、自身の制作を事例として
紹介出来たらと思います。
制作1-刻(とき)
この紙は、絵を描く前の状態です。
「落水」や「斑紋」などを使い、紙漉きからでしか作れない色々な模様や凹凸が生まれ、独特の和紙になっていると思います。
冒頭の作品は、この紙を使用して制作しました。
絵を描くために必要な紙の表面加工
私の場合、漉いた紙にはドーサやPVA(ポリビニールアルコール)を施しています。
絵画用の紙にするためには、表面強度を上げたり、滲み止めをする必要があります。
おそらく、紙漉きをして出来た紙をどうしていいか分からない一つの原因は、
紙が弱いからなのかと思います。
基本的には、和紙・洋紙の製紙業界で作られる紙には、紙力剤などの薬品が添加されています。
例えばコピー紙、画用紙、牛乳パック、段ボールなど、実用的な紙は全て薬品によって加工されています。
ですが、家庭で作る紙づくりではなかなか薬品まで添加する事は少ないので、
水に濡れると紙が溶けるし、鉛筆やペンで描こうとしても、すぐに毛羽だったり滲み過ぎたりし、
結果扱いに困るという流れだと思います。
紙が出来たら、薬品などでしっかりと加工をしてあげることをお勧めします。
まとめ
今回は、私の制作を事例に上げ、自分で作った紙の活用方法の一つを紹介しました。
和紙を生活の身近な場面に取り入れる事は簡単そうで、意外と難しいと思っています。
現状、和紙の業界では大きな課題となっており、紙漉きという文化も一般的にはかなり遠い存在になっていると感じています。
今後も、出来る限り色々な和紙の情報を発信していこうと思っているので、
ぜひ、自分で紙を作る面白さや興味を持って頂けたらと思っています。