本格的な紙とは = 職人が作る紙
紙漉きを経験した事がある方の中には、このように感じた人も多いのではないでしょうか?
それは、一般的に紹介されている紙づくりの方法が、かなり簡易的であるからです。
実際、紙漉きの現場で働いていた私からしても、
現状のネットや書籍でいくら調べても、現場レベルの紙を再現する事はかなり難しいと思います。
ここでは、私が現場で学んだ知識や経験を基に、自宅で出来る本格的な紙の作り方を、実践しながら解説していきます。
題材:針葉樹パルプ(牛乳パックの素)で紙を作る
実際に、牛乳パックの素でもある針葉樹パルプを使い、自宅でも出来る本格的な紙の作り方を解説していきます。
紙サイズ:250mm×180mm
重さ:4g
材料:針葉樹パルプ
用意する材料、道具について
一覧リスト
材料
・針葉樹パルプ
・ネリ剤
紙漉き道具
・簾桁
・漉き枠
・簾(竹製)
・紗(ステンレス製)
その他道具
・計量カップ 3つ
・布切れ
・アイロン
・測り
・ミキサー
・乾燥板
・角材
材料、道具の仕入れについて
解説で使用している各材料、道具は全て市販のものを使用しております。
特に重要な材料と道具について
ネリ剤
紙漉き道具
左(漉き枠、簾、簾桁)、右(紗)
粘液によって、水中で原料がよくほぐれ、そのほぐれた状態を維持してくれる。
そのほぐれた状態で紙を漉くので、均一に原料が広がり、繊維がしっかり絡む。
結果、強く丈夫、均一で綺麗な紙になる。
紙の原料を流し込み、原料だけを掬う(すくう)ための道具。
竹製やポリプロピレン製などもある。
簾桁を持って左右に揺らす事で、紙の原料を均一に広げる事ができる。
網目の跡がないキレイな紙を作りたい時や、模様を作りたい時などに使う。
ナイロン、ポリエチレン、ステンレスなど、色々な材質がある。
作業前準備
ネリの準備
・ミキサーに水500mlを入れ、ネリ剤を約0.2g入れる
・1分程度、ミキサーをかける
・1日ほど放置し、粘剤が全て溶けて透明な液になれば完成。
紗の準備
・紗(ステンレス製を使用)を、漉き枠と同じくらいのサイズにカットする。
・竹簾に紗を被せる。
作業工程
1.原料作り
1.
パルプ4gを軽量機で計ります。
2.
水500mlに対して、針葉樹パルプをミキサーにかけます。(目安:1分程度)
3.
別の入れ物に移します。
2.ネリを原料に入れる
大事なポイント:複数回に分けて原料を流す
今回は2回に分けて原料を作ります。
1.
先ほど作った原料を、250ml/一回として、容器に移す。
2.
水を250ml足します。
3.
ネリを足します。
ネリは指でつまんで切って下さい。
※場合によっては一気に入ってしまって溢れます。
4.
よく混ぜます。
とろみを確認し、糸が引くようになったらOK。
5.
ネリを使うと、水中で繊維が解れた状態を維持してくれるので、ダマのない綺麗な紙が作れます。
3.紙漉き道具を準備する
1.
角材を平行になるように置きます。
※傾きがあると、紙の厚みにも影響が出ます。
2.
簾桁を置きます。
3.
竹簾をセットします。
4.
紗をセットします。
5.
漉き枠をセットします。
6.
水でしっかり濡らし、空気を取り除きます。
※空気が抜けていない場所は、原料が収まらず、薄くなってしまいます。
4.紙漉き
1.
紙漉き道具を準備します。
・角材を置き、紙漉き道具をセット
(下から、簾桁、竹簾、紗、漉き枠の順)
2.
一層目の原料を流します。
3.
一層目に流した水分が引いたら、二層目の原料を流します。
二層目は、手で一度クッションさせて原料を流して下さい。
高い所から流すと、一層目の原料の形を崩してしまいます。
4.水分が引いたら漉き枠を外します。
5.簾桁を立てて、さらに水分を落とします。
5.乾燥
1.
テーブル台の上に布切れを引きます。
2.
紗を裏返し、漉いた紙を布切れの上に置きます。
3.
紗をゆっくり紙から剥がします。
4.
布切れを紙の上に被せ、その上からアイロンをかけて、徐々に水分を抜いていきます。
5-A.
そのまま乾燥させるパターン。
5-B.
乾燥板に貼り付けて、乾燥させるパターン。
まとめ
今回紹介した紙づくりは、紙漉きの基礎の一部です。
ですが、この基礎を基に、色々な応用を効かせて様々な紙が作られています。
これを機会に、紙漉きに対して興味を持って頂けたら嬉しいです。