紙の原料を思った通りの色に染める事が出来れば、それは職人と変わりません。
実際紙漉きの世界でも、見本帳通りの色にその都度原料を染める事はとても難しく、何年も修行しながら経験を重ねて習得していく作業です。
今回は、そんな染色の方法を紹介していきます。
染色内容
お題:赤い楮の原料を作る
原料:楮10g
染色方法:直接染料
染料剤:レッド
染料濃度:5%

染色に必要な材料について
材料は全て市販で購入できます。

楮
・和紙の代表的な原料の一つです。
色染まりも良く、扱いやすい材料です。
・使用する楮は、漂白済みの楮です。

直接染料
・媒染によらず繊維に直接染着する合成染料です。
紙漉きの世界では、よく用いられる染色方法の一つです。

無水芒硝
・染料の染まりを強くする染色促進剤です。
また、染色時の色ムラを防止してくれます。

フィックス剤(定着剤)
・染料とフィックス剤のイオン結合により、染料を不溶化し、色抜けを防止してくれます。
作業工程
原料の準備

1.
楮を10g測ります。

2.
芒硝20%=2gを足し、よく撹拌します。

3.
原料を鍋に移します。
染料を入れる

1.
直接染料を5%=0.5gをお湯で溶かします。

2.
鍋に移した原料に、染料を入れます。

3.
・熱を加え、原料をこまめに混ぜながら、少しずつ温度を上げていきます。
熱を加えると、染液が繊維の中に良く染み込み、染まりやすくなります。
温度は、40度くらいを目安に染める事を勧められている情報が多いですが、私の場合は60〜70度くらいまで上げます。
・試験紙を取り、色の染まりを確認します。(※後ほど詳しく説明します。)
・色の染まりがokであれば、熱を止めてそのまま温度が下がるまで放置します。
試験紙の取り方
必ず試験紙を取り、実際に原料の色が自分の理想通りの色になっているかを確認しましょう。

1.
鍋から少量の原料を取ります。

2.
水を入れた計量カップに、原料をほぐします。

3.
紙漉き網に原料を流します。

4.
色の確認をしたいだけなので、手で掴んでも大丈夫です。

5.
布を準備し、その上に広げます。

6.
・布で紙を挟み、アイロンをかけ、大体の水分を抜いていきます。
・何回か繰り返したら、直接アイロンをかけて乾燥させます。
※高温すぎると、実際より色が抜けてしまうので、中温くらいで乾かして下さい。

7.
まだ薄い場合は、染料を加え再度調整して下さい。
現状の色が濃すぎた場合は、作り直した方が一番良いですが、白い原料を追加すれば薄く見えます。
定着剤を入れる

1.
定着剤を入れる前に、原料を1〜2回濾します。
※鍋に余計な染料が残っていた場合、そのまま定着剤を入れてしまうと、その分色が濃くなってしまいます。

2.
水と濾した原料を鍋に入れて、再度熱を加えて温度を60〜70度までゆっくり上げていきます。

3.
定着剤4%=0.4ccを入れます。
・定着液が少ないと、色抜けが起こりやすくなります。
・入れ過ぎると、原料同士がくっついてしまい、紙を漉く際にほぐれにくくなってしまいます。
・15分くらい温度を維持しながら、こまめに原料を混ぜます。

4.
時間が経ったら、原料を濾して完成です。